大当院は415床の中規模急性期病院で、複数の外科系診療科がある総合病院である。手術室は7部屋で年間手術件数は約4300件、 東大阪を中心とした地域医療を担っている。
内視鏡カメラの性能向上によりHighDefinition映像(HD映像と呼ぶ)の記録ができるようになり、HD映像の記録および保存を簡便に行える管理システムの構築が 必要となったため専用のサーバーに保存するシステムをDGS社のLiveStreamerで構築した。このシステムにより、外科系医師は手術に専念できるだけでなく、 術後に内視鏡映像を簡単に閲覧、編集することが可能となった。そして、当院の内視鏡手術の増加につながったと考えている。 今回、その詳細と今後の展望について報告する。
従来、手術室映像に関してパナソニック製メモリーカードポータブルレコーダを利用してSDカードで記録。保管に関しては、スタンドアローンのPC内にフォルダ名 を患者ID記述し、そのフォルダ内にSDカードの情報をコピーしていました。 使用していく上で問題が発生しましたので保管、管理を簡便にしたいと思い、平成25年11月にシステムを導入致しました。
様々な問題点としては、
1)フォルダ名を患者IDに記述するが、記載間違い。
そのため、手術室で保存した映像を探すのが困難になってしまう。
2)ファイルを操作している間に異なるフォルダへ移動させてしまっている。
3)手術室からの閲覧のみで電子カルテから閲覧が不可能。
4)SDカードでの維持・管理方法の問題が挙げられます。
以上の問題を解決するために
1)Webブラウザを使用しての手術検索
2)電子カルテ端末には全くインストールしないソフトウエア
3)手術カルテ記載のバーコードを用いて患者ID入力しSDカードをWebブラウザへアップロード
SDカードにおける映像データアップロードのワークフローは下図の通りである。
その他に当院では、運用の改善として
当院では、30TBの映像データ保管エリアを有している。 全体の映像データの流れは下図の通りである。
ただし、基本的には映像データを保管した場合、登録してから3年で自動削除する仕組みを取り入れた。
勿論、必要な映像データは保護して長期間の保管も可能にしている。
これにより膨大に蓄積される映像データの容量を削減して、コスト低減を図っている。
閲覧のみ。閲覧とダウンロード可能。閲覧とダウンロード、削除や保護が可能のユーザカテゴリを設け、 適切な医師、看護師、パラメディカルスタッフの権限を配布している。
どの端末から誰がどのような作業を実施したかを把握するログ管理をしている。
以上により診療科に即したシステムの利用価値を把握し、次世代のシステム構築を考えられる指標になる。
術式に関しては、当病院の特徴として名称が増えているのが実情である。 術式名称が増えることにより、マスター入力を行い選択するなどと言ったマスター管理を省略するため 術式名称を直接、入力しマスター化することも可能なシステムを構築した。
以上のようなシステムを導入することにより、患者説明や手術室での映像データの記録の統一性が図れ、外科系医師は手術に専念できるだけでなく 、術後に内視鏡映像を簡単に閲覧、編集することが可能となり運用がスムーズになった。
Windowsに標準でインストールされているWindows Media Playerで、 保存動画のオンデマンド再生が簡便に行えるようになっている。
さらに、保存データは無圧縮なので最高画質での再生が可能となっている。
しかし、SDカードの取り扱いに注意(破損や紛失、持ち出し)が必要なことや、比較的安価と言っても民生品と比較すると高額の部類に入ること、 またサーバに蓄積したデータの破損や保存期間に制限があるといった問題点もある。
今後の対策として、SDカードを廃止して、映像をリアルタイムに院内ネットワークを利用して院内に配信できるようにしてSDカードの運用自体をなくし、 遠隔場所でも把握出来るようにしたい。
以上を達成し、録画システム運用の利便性の向上と共に医師のモチベーションの向上と内視鏡手術の増加をすることができた。
今後も更なる医療技術の進化を検討したい。